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世界最悪の旅

私が読書の楽しみを覚えたのは、確か小学4年生頃だったと思う。小学校の図書館にあった「十五少年漂流記」を読んだ事がきっかけになった。

それから50有余年、相変わらず、冒険記や探検記が大好きだ。一度、拙ブログに書いたのだが、誤って削除してしまった「世界最悪の旅」をやっと書く気になった。

最悪3
アプスレイ・チェリー・ガラード著「世界最悪の旅」である。

この本は著者が南極探検から生還し、その後、第一次大戦に従軍してから書かれた。探検より10年近くすぎた時に書かれたため、客観的な文章となっている。

この本は大まかに分けて、4部に分かれている。第1部は、それまでの南極探検の歴史 第2部は、著者と二人の仲間が行った、皇帝ペンギンの卵を採取するための「世界最悪の旅」 第3部が、スコットの南極点への行進と遭難 第4部が、スコット隊への批判についての反論と探検の総括である。

ガラードは、24歳という若さで、スコットの南極探検隊に参加した。彼の立場は、皇帝ペンギンの研究をする動物学者としてだった。

探検隊は、1884年建造のオンボロ船「テラ・ノバ号」で、1910年6月にイギリスを出発して、1911年1月に南極大陸に上陸した。

探検隊は、南極大陸に前進基地を設営して、南極点到達のために行程上に何か所もの食料貯蔵庫を作っていく。

著者のガラードと、ウイルソン、ボワーズの3人は、1911年6月から8月にかけて、皇帝ペンギンの卵を得るため極夜の旅をする。南極の冬は、24時間真っ暗闇で、気温は氷点下50度以上に達する。この旅が世界最悪の旅と命名されている。


最悪2


世界最悪の旅の何が最悪なのか。一つだけあげると、当時の貧弱な装備である。例えば、寝袋はアザラシやトナカイの皮を縫い合わせた物だった。寝るときは、バリバリに凍った寝袋に潜り込んで、体温で溶かさないと寝られないのだ。氷点下50度の真っ暗闇の南極大陸で、2カ月間以上もの旅をやりおおせた事に感心する。大英帝国の探検魂は、永遠不滅だと感じた次第だ。

次にスコットの悲劇的な遭難だ。スコットが隊長となった南極点到達隊が、1911年11月1日に基地を出発する。なお、ガラードは基地にとどまり、後方支援活動に専念していた。

スコット隊は、重いソリを人力で引くという艱難辛苦の努力の末、1912年1月17日に南極点に到達した。しかし、南極点には、すでに1911年12月14日に、ノルウェーのアムンセン隊が到達して、ノルウェー国旗が立てられていた。スコットは、南極点到達競争に敗北したのだ。ノルウェー国旗を見た時のスコットの落胆は、いかばかりであったろうか。

失意のうちに基地まで帰還するスコット隊は、食料貯蔵庫まで、あと20キロ地点まで帰ってきたが、1912年3月29日に力尽きて全員が死亡する。ガラードとともに、世界最悪の旅をしたウイルソンとボワーズも、スコットと共に死亡した。

はしょって書いたが、以上がスコット隊の悲劇である。著者のガラードは、帰国後、心無い大衆から様々な批判を受ける。

批判の主なものは、アムンセンのように南極点到達だけに集中するべきだったというものだ。しかし、スコット隊は、多くの学者を伴った学術探検隊であったという事。また、大衆受けする南極点到達には、重きを置いていなかったという事がある。

また、アムンセンのように、犬ゾリを使うべきだったという批判もされた。スコット隊は犬ゾリも用いたが、犬の扱いに習熟していなかった。というか、イギリス人は、犬をたんなる使役動物ではなく、人間の友達という意識があった。

当時の犬ゾリは、犬に過酷な労働を強いて、衰弱した犬は容赦なく殺して、人間の食料としながら前進するものであった。スコット隊は、南極点到達行進の前半、馬ゾリを用いたが、あまりの寒さのために馬が弱ってしまった。しかたなく人力で重いソリを引く事となった。

スコット隊は、多くの学術的な課題を持って南極探検に望んだ。その事が、南極点到達だけを目標としたアムンセンに先を越される原因となった。

ガラードは、1912年11月12日に、捜索隊の一員として、スコット隊の最後のテントを遺体とともに発見する。スコットの遺体の頭の前には、日記が置かれていた。日記の中身は、死に際しても冷静に失敗の原因を分析しており、後悔の念などは書かれていなかった。

生き残ったガラード達は、スコットの遭難後、1年を過ぎた1913年の春に、やっと南極大陸を脱出して、故国イギリスに帰還する。

極地探検の物語は、とても面白い。129人全員が死亡したフランクリンの北極探検・極夜の北極を何カ月もさ迷って、生還したナンセン・南極探検で探検船を失ったにもかかわらず、全員を生還させたシャクルトンのリーダーシップ。などなど、おいおい書いていきたい。

8月27日に一部を加筆訂正した。




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